「ありがとうございました。さ、行きましょう」
「えっと緑さん、もしかしてこのままアンジュラんとこに行く気になったとか」
「……はい」
私たち3人はお互いに顔を見合わせた。こんなに早く解決していいものか? 私にしてみりゃ嬉しい限りなんだけど、こじれずにすんなりと行ってくれたら話は早いし。でも、
「綠さん、でもどうしていきなり? あんなに拒んでいたのに」
「ここにいたら悲しいから。
それに私がもう確実にこの世にいないということが分かりましたから。ちゃんと死ねたってことが分かっただけで、それだけでいんです。
私の体がもしかしたらまだ翠さんみたいに病院のどこかで生きているかもしれないってちょっとだけ思ったりもしましたけど、その確率ももう消えました。
それに……あなたを乗っ取って帰って来てもきっと彼は見向きもしない」
「!!!!!!!
乗っとる? うそ、私のこと乗っ取ろうとか思ってたの?」
「ええ。でもそのお二人がやはりあなたから離れないので」
「二人がいなかったらもしかして」
「そうですね。乗っ取ろうと思ってました」
「だって、死にたかったんでしょ?」
「そこに健康な体があって、それが自分のものになる確率があるなら考えも変わるってものなんですね」
確かに緑さんほどではないにしろそこまで自分は不細工でもないと思いたいんだけど、それにしても乗っ取るとか怖いことを言う。
やはりこの人を怖いと思った私の感覚はおかしくなかったんだ。それでも、
「ちゃんと……お別れとか、しなくていいんですか」
「それはしたいけど、出来ないでしょう。
私もこうなるのに前もってお別れなんてするはずもなく、何も言わないでこうしてしまったんですから、それにこれ以上この話をしても私も辛くなりますから」
出来ないの?
とアンジュラとルーインを振り返ると、二人の顔には『余計なことを言うんじゃない』という表情がひしひしと現れていた。
なんだ、出来るんじゃん。お別れできる方法あるんじゃん。
にっと微笑んで緑さんの方を振り返った。

