天使みたいな死神に、恋をした


 
 雰囲気からして嫌いになって別れたってわけじゃ無さそうだ。二人とも悲しんでいるし慈しんでもいる。
 
 でも、どうしてそうなったのかは私からは聞けないし、聞いちゃいけないことだってことくらい分かってる。
 
 信二君の隣から離れない緑さんを私たちはしばらくの間二人きりにして、玄関のところまで下がりそこからひっそりと見守ることにした。
 
 狭い玄関にでかい男二人と私。
 
 いくら肉体を持たないと言っても、きつく感じてしまう気もする。
 
 アンジュラに至っては身体が半分壁に埋もれている。


「ちょっともっとあっち行ってよ」
 
 天使と死神に挟まれる形となった私は、玄関の三分の二を占領して壁にもたれている(ように見える)態度Maxなルーインの腰辺りを肘で押した。

「どうせ立ってたって疲れないんだからいいだろ別にうるせえな、黙れ」

「違うってば、だからほら」

 私は半分壁に埋まってるアンジュラを親指で指す。半分埋まっていても涼しい雰囲気をさらす死神と態度の悪い天使を交互に見て、天使の腰あたりをもう一度押した。


「いいじゃねーか、壁に埋もれる死神。それこそ死神だろ。天使が壁に埋もれてみろ? 悲しさが増すだろ? 善良な市民は悲しい顔で抗議するだろうよ。でも死神だとどうだ? ほら、絵になってるじゃねえか」

 理不尽極まりない天使の暴言にはもう慣れたけど、何も言わない死神が不憫にもなる。