「これからじゃなかったのかよ。まだまだこれからだったのに。なんでだよ」
気持ちをどこにぶつけていいのか分からない信二君はやりきれないとばかりに頭を掻きむしり、枕にボスっと顔をうずめた。
「ほんとにごめんね」
信二君の髪の毛に指を入れるものの、髪の毛に触ることは出来ない。背中をさすってやってもその手を感じることはできないし、緑さんも信二君を感じることはもうできない。
彼はきっと泣いているんだろう、声を殺してはいるが肩が上下し、声が少し漏れている。
私は節操なくもこの光景を自分のことに重ねてしまった。
ダメだと思っても、そうしてしまう自分がいた。
亮……
何してるんだろう。

