中へ入ろうとしたところで玄関が開かれた。
 ゆるりと出て来たのは同じような年代の男性。
 
 肩を落とし、くたびれた雰囲気に元気はない。

「来て……くれてるんだ」
 
 ぼそっと言った緑さんのことばは重たく沈み、開けられている玄関から家には入らず今出て来た男の人の後を無意識に着いていく。

「緑さん?」
 
 私の呼びかけは聞こえていないけど、この男性と緑さんになんらかの関係があることは雰囲気からして察しがつくので、この場合、黙って着いていく他に方法は無い。

 
 その男の人は近くの駅から電車を乗り継ぎ、40分程したところで電車を降りた。



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 しばらくして、私はふわふわした気持ちの良さの中で目を覚ました。

 清みきる青空が見える。懐かしいハンモックに揺られているようで心地よい。
 
 視界の片隅にはもう見慣れてしまった馴染みのある白い顔が見えて……白い顔……

 
 アンジュラかな。

 なんでアンジュラの顔がそこにあるんだろう。そんなところに顔があるのはおかしい。



「お前はやっぱりバカだろ? このままとっとと地獄へ行け。いいや、行ってしまえ。そしてそこから出てくるな。二度と出るなよ」


 ぬるりと眼前に姿を現してきた天使とその口から放たれる暴言。なんでそんなことをいきなり言われなければならないのか。

 やつが口が悪いのはとうに知っている。

 それでもいきなり言うには根拠ってもんがあると思うんだけど、今のところそこは分からない。