「ここです」
 
 綠さんは玄関を背に私の方を向き、じっと私の目を凝視した。その後、私の後ろに目を走らせ、本当に天使と死神がいないのかを確認している風だ。

 やはり何か企んでる。

 ごくりと喉を鳴らした。
 
「分かった。じゃあ、中に入れてもらえるかな」

「……はい」

 緑さんが振り返ったのとほぼ同時に私は怖くてとっさに後ろを振り返った。が、突如体がくるりと緑さん側に向き変えられた。

 目の前には眼光するどい緑さんの目。

 殺されそうな視線を感じ体中に電気が走った。

「あ、本当に翠さんしかいないんですね」

 口角が少し上がった緑さんの顔に戸惑う。

「私しか……いないよ」

「よかった」

 くすっと笑い、玄関のほうに振り返った。


『見えませんが後ろにいますから』
 

 アンジュラの声が頭の中でこだまして、怖いけど、安心して大丈夫だ、何かあったら私の後ろには二人いると気持ちを立て直し、


 緑さんの隣に並んで立ち、一つ、頷いて見せた。