私たちが来る前にルーインと緑さんは、
全て話すなら人間の世界に一度だけ来させてやる。いつもなら絶対に出来ないことだけど、とりあえず今回はこっちに非があるので、全て話すならという理由で話をまとめていたそうだ。
どうして死んでまで人間の世界に戻って来たかったのか。
それは、確実に自分がこの世からいなくなっていることを確認したかったからだと小声で言った。
「だって、死んじゃったんでしょ? 自分で分かってるんじゃないの?」
「それを確認したいんです。私はどうしてもこっちに来たかった。だからこっちに来られて良かったって思っています。でもこの前聞いちゃった話だと私は……」
最後の大事なところで話を濁した緑さんに、
「自殺者は俺のところには来られないってやつを聞いて、こいつに成りすましてここから出ようと思った。ってことだろ」
ルーインが強引に引き取った。
何も言わずに首を少しだけ動かした緑さんは『はい』とも『いいえ』とも受け取れるあいまいな答え方で、まだ納得いっていないってことがよく分かる。
「ねえ、緑さん。緑さんの思うことって何? こっちに戻って来て何をしたかったの? 自分が本当にこの世にいないことを確認したら、それからどうするの」
「……どうしたらいいのか分からない」
「見て」
私は自分の体の横に立ち、手招きして緑さんを近くに来させようとしたけど彼女はなかなかこっちに来ようとしない。
「行けよ」
緑さんの肩を強めに押した天使はそのまま背中も押し、嫌々ながら緑さんを前に歩かせた。
やり方はいただけないけど、そのくらいの押しがないと彼女の場合、通じないのかもしれない。

