アリエラに次ぎ帝国随一の魔女イレーネが捜索に出たということは、ロードメロイの今回の事件に対しての関心の高さがうかがえる。


「しかし、本当にヴォルヴィア山で見つかったとなればネイアノールが黙っておるまい」

「陛下はあれをどう使うつもりなのでしょうか」

「それは陛下のお心次第。何に使うかなど皆分かっているじゃろうが…」

オリバーは言葉を切って、苦い顔をしながら長い溜息を吐く。



「これでまた他国との関係がこじれるじゃろうな」

消魔石は戦局を左右しかねない程に強力な石だということだ。




「まぁあれを手に入れても軍事用に加工して大量生産するには数か月かかる。その間に説得してみよう」

オリバーは不安げなリーシャを安心させるように微笑み、皺だらけの手でリーシャの頭を撫でた。

不安は残るものの、オリバーが元帥の地位にいる限り幾分かは安心できる。

消魔石なんて見つからなければいいのに。




「そうじゃ、リーシャ」

憂いの表情を見せていたリーシャにオリバーが思い出したように声を上げる。



「そろそろ薬が切れるんじゃが取りに行っても良いか?」

話を変えたのはきっとリーシャのためだろう。

優しい口調でそう言ったオリバーにつられるようにリーシャは緩く微笑んだ。




「えぇ、遅い時間だったら大丈夫」

ライルが店に出るのは夕方。

それ以降であればいつでも良かった。