「まなみ」
「...」
「まなみ? 聞こえてる?」
「...大丈夫、聞いてる」
「俺、今からお前の会社行くわ」
「うん。お願い」
「なぁ、確かお前の親父さん、去年亡くなってるよな」
「......そうだね」
「どうなってるんだ? 何があった?」
「来て」
電話を切ると、敏夫は今止まっていたタクシーに乗り込み、まなみの働いている会社へと急いだ。
電柱のところに赤い帽子を被った細い男がいることに気付いた。不自然に直立して立っているから嫌でも目につく。
敏夫と目が合うと、赤い帽子の男は頭を下げておじぎをした。敏夫もつられておじぎをしたが、振り返ったらもうそこには誰もいなかった。

