「藤井、そういえばお前ストーカーどうなった?」
聞いてきたのは大阪出張から帰ってきた部長だ。
「あぁ、毎日のようにいますよ。今朝だってまたいましたしね」
「嘘だろ?」
「そんなことで嘘なんて言いませんよ」
「まだ...いるのか? どんなやつだっけ」
「赤い帽子被った細い人です。同じ事しか言わないんだもん。私に近づくことはしないからまだあれなんですけど」
「近づかない? 毎日いるって、本当にそいつなのか?」
「はい。毎日同じ格好してうちの前に立って、私が出てくるの待ってるみた
いなんです」
「そうか...」
部長は額の汗を拭きながらネクタイを緩めた。
「部長? 具合悪いんですか?」
「いや、なんでもない。そういや彼氏は?」
「はぁ...今日はうちにいますけど」
「...そっか」
「大丈夫ですか?」
「あ...おお」
ひっきりなしに流れる汗を拭きながら部長はちょっとでかけてくると言って外に出てしまった。

