十分涼んだ後は、足だけを川に浸け、持って来ていたなつみかんを手にしました。

川で冷やされたそれはひんやりと美味しい。


「んー。さすが、夏樹くん家のは美味しい」

もぐもぐと口を動かす中、彼の視線に気づきました。


「ん。何さ」

「いやー……、服の下の水着って──」

「スクール水着だよ。健全な田舎の女子高生らしく!」


わたしが可愛い、ヒラヒラとした水着なんて持っている訳がないのを知ってるでしょうに。


「わたしは、服とかどうでもいいの。
とにかく外に出たくないの。
田舎に住んでたってインドア娘はいるんだからっ。
夏樹くんも、何を今さら」

「今年こそはオシャレとかに目覚めてないかなって。
色気ねぇな……」

「うるっさい!」


なつみかんを食べ終わり、さっさと家へ向かいながら、わたしの自由が遠のく予感を深めました。


ただでさえ暑い夏は嫌いなのに、運命とは非常なものですね。


さらば、静かな夏。