鍵は開けておいてくれるって言ってたし、わざわざ安田さんも葉太もいない日を選んだんだから。


―ガチャ…


「お邪魔しまーす…」

一応小声でそう言って、玄関に靴がないことを確認して家に入る。

思わず立ち止まってしまった。


春斗と一緒にカレーを作ったことや、安田さんと買い物に行ったこと。

蒼空くんに初めて会ったときのこと。

葉太に告白されたこと。


………希龍くんとキスしたこと。


やっぱりここに来ると全部思い出してしまう。楽しかったことも、悲しかったことも。

楽しかったことの方が圧倒的に多いけど、一番思い出したくないことが起こったのもこの場所だった。


…ここは、希龍くんを最後に見た場所。

彼との思い出がたくさん詰まった、大切な大切な、居場所だった。


「あ…、あったあった…」