「んー……それが、わかんない。だいたい、どうしてヨシがいきなり怒鳴ったのかも、わかんないんだもん」

「あー、そうっかあ。心当たりもゼロ?」

「うん、ちょっと思い付かない」

「あー、そうっかあ」

本当に、なんで昨日彼はあんなに怒鳴ったんだろう。

私が休日にまで押し掛けたから?

ヨシママが席を立った時に帰らなかったから?

本を取り上げたから?

どれも、なんか違う気がする。

ということは、ヨシだけにしかわからない理由で怒鳴ったのかもしれない。

私にはわからない、ヨシだけが知ってるなにかで。

麻里亜ちゃんも、一緒になって天井を見上げる。

もちろんだけど、見上げることに意味はない。

「うーん、男の子には男の子の事情があるんじゃないっかなー。たとえばさ、昨日加奈ちゃんがヨシくんに嫌がることしたとか」

「えーっ、それはないよー」

否定したものの、どちらかというと、嫌がることだったらしょっちゅうやってる。

だからこれは、あんなに怒鳴られるほど嫌がることをした記憶はない、っていう意味の否定だった。