羨ましいと思った。

汚い感情もなく、ただ、好きな相手を、素直に思い合える二人の心が。

「君らと僕は違うんだよ」

負け惜しみで呟いた言葉は、

「いいや。なにひとつ、変わんないよ」

呆気なく否定される。

僕はそれを、無視した。

君になにがわかるって言うんだ。

やれやれと、彼が肩をすくめているのが正面の窓に薄く映っていた。

なにがやれやれなんだよ。

心の中だけで八つ当たりする僕をなだめる気があるのかないのか、それともあえて放置しているのか。

悠里がポケットからケータイを取り、無言でメールを打ち始める。

そして僕らは、学校までもう、なにも話さなかった。