加奈が立ち上がる。
寄ってきた彼女は、すとんとしゃがみ込んで、本の表紙の向こうから僕を見つめてきた。
「……」
「……」
しかも無言。……文章を、目で追えない。
つらつらとある文字の向こうに、僕の大好きな天使がいたんじゃ、どうしたって読書なんかできるわけがない。
いや、本当は最初から本を読むつもりなんてなかったのだけど、形だけでさえ、難しくなってしまう。
なんだって、なんだってそんなに君は、僕の心を焦らすんだ。
「ね、ちゃんと話しようよ、せっかくなんだからさ」
「いつも話してるだろ。せっかくもなにもない」
「もー、そー言わないでよー、意地悪」
また立ち上がった加奈に、すい、と本を取り上げられて、僕らは真っ正面から見つめ合う形になる。
だけど、
「っ、なんだよいきなり」
僕は本を奪い返しながら、自分から視線を外した。
外したのに、
「ねえ、ヨシ」
彼女は僕の顔を、掴んだ。
両頬をそっと挟み込まれ、正面を向かせられる。
寄ってきた彼女は、すとんとしゃがみ込んで、本の表紙の向こうから僕を見つめてきた。
「……」
「……」
しかも無言。……文章を、目で追えない。
つらつらとある文字の向こうに、僕の大好きな天使がいたんじゃ、どうしたって読書なんかできるわけがない。
いや、本当は最初から本を読むつもりなんてなかったのだけど、形だけでさえ、難しくなってしまう。
なんだって、なんだってそんなに君は、僕の心を焦らすんだ。
「ね、ちゃんと話しようよ、せっかくなんだからさ」
「いつも話してるだろ。せっかくもなにもない」
「もー、そー言わないでよー、意地悪」
また立ち上がった加奈に、すい、と本を取り上げられて、僕らは真っ正面から見つめ合う形になる。
だけど、
「っ、なんだよいきなり」
僕は本を奪い返しながら、自分から視線を外した。
外したのに、
「ねえ、ヨシ」
彼女は僕の顔を、掴んだ。
両頬をそっと挟み込まれ、正面を向かせられる。

