僕は、加奈が帰ろうとしたのを止めた。

なんでこういうことになったのか、わからないでもない。

いや、むしろよぅくわかっているはずだぞ、園田善紀。

彼女を、もう少し見ていたいと思ったんだ。

あんな夢を見た後ろめたさを感じていながら、だけど、彼女をもう少しだけ、僕の網膜に投影していたかった。

そばにいて、彼女の呼吸を聞いていたかった。

そういうわがまま――たぶん一種の独占欲から、僕は彼女を呼び止めたんだ。

ただ、どうしてそれで彼女が僕の部屋にまで転がり込むことになったのかは、よくわからない。

加奈は変なところで突進派だから。流れだ、ということにしておこう。

僕の部屋は広くない。

机とベッドと本棚とテーブルと……たったそれだけ詰め込んだだけで、人が座るスペースなんかはあと、ベッドとテーブル周りしかない。

テーブルの周りっていったって、女の子の部屋のように絨毯やクッションが並んでいるわけじゃない。

剥き出しのフローリングだ。