みんな、夢だった。

そう、僕のおぞましい願望が形になった、悪夢だ。

――悪夢……本当にそうか? と自問する。

僕は加奈のことが好きだ。だけど、彼女を傷つけたくない。

だけどだけど同時に――本当は、今の夢の出来事を、文字通り夢見ているんじゃないか。

「くそったれめが」

ただの夢だというのに、まだ、掌に彼女の手触りが残っている気がした。

とろけるような甘い香りが、火傷するような唇の熱が、わたあめのような吐息が、僕の名前を繰り返す湿り声が、まだ。

「……くそぅ」

男としての本能に、こういう時、むしゃくしゃする。

あんなに罵倒したくせに、僕の下半身は熱を帯びていた。

とにかく、これをどうしようか悩んでいると、母が僕を呼んだ。

「善紀ぃー、加奈ちゃんが遊び来たわよー」

「……」

…………本当に、どうしよう……。