「……ヨシに、触れてたい。……ぎゅってしがみついて、すうって深呼吸して、ヨシのにおいかいで……

しばらく――こう、してたいの……」

「……」

「ずっと、ずぅっとしてみたかったの……。――ダメ?」

もう一度、がんばって顔をあげて、僕を見つめて訊ねてきてくれる加奈を、かわいいと思わずにいられるだろうか。

自分のことだけを見て、自分のことだけを求めてくれる女の子を、愛しいと思わずにいられるだろうか。

僕には無理だ。

不思議なことに、とても穏やかな気持ちで、加奈の体に腕を回す。

そしてしっかりと、包み込んだ。

「いいよ。加奈の気がすむまで。こうしてよう」

「ん……ありがと」

ちゃんと、息できているんだろうか。

嬉しそうにうなずいた加奈はまた、僕の胸に顔を埋める。