だから――
「だから僕はお前に謝りたいんだ。
加奈は僕が守る。
身を引いておいて割るけど――お前から加奈を奪い取る。
今日、いま、ここで」
私はそろそろと手を伸ばし――
「北川――ごめん」
掴んだ。
瞬間、引っ張られた。
私の体が、心が、すべてヨシへ。
ヨシの手で。
(あ――)
なんて思っている間に、ヨシが走り出す。
北川くんの横を通り抜けて。
すれ違いざまにうかがった北川くんの表情は、とても複雑な、笑顔。
眉をしな垂れさせて、とても切ない目をして――
けれど、口もとだけは精一杯に笑ってた。
私は、ありがとうって――言わなかった。
代わりに、その笑顔にたいして、微笑み返した。
手も、振らなかった。
だから代わりに、笑顔を見せてあげた。
いま、私、嬉しいって。
ほんとに、一瞬だけだったけど――
ありがとうと言わなかった、ありがとうの証明だった。
「だから僕はお前に謝りたいんだ。
加奈は僕が守る。
身を引いておいて割るけど――お前から加奈を奪い取る。
今日、いま、ここで」
私はそろそろと手を伸ばし――
「北川――ごめん」
掴んだ。
瞬間、引っ張られた。
私の体が、心が、すべてヨシへ。
ヨシの手で。
(あ――)
なんて思っている間に、ヨシが走り出す。
北川くんの横を通り抜けて。
すれ違いざまにうかがった北川くんの表情は、とても複雑な、笑顔。
眉をしな垂れさせて、とても切ない目をして――
けれど、口もとだけは精一杯に笑ってた。
私は、ありがとうって――言わなかった。
代わりに、その笑顔にたいして、微笑み返した。
手も、振らなかった。
だから代わりに、笑顔を見せてあげた。
いま、私、嬉しいって。
ほんとに、一瞬だけだったけど――
ありがとうと言わなかった、ありがとうの証明だった。

