そんな、異常な熱を自覚した時にはもう、

「この……っ、北川ぁ!!」

力いっぱいに握った拳を、

「加奈から離れろ!!」

「ぃぐ……っ!?」

肩を掴んで無理やり振り向かせた北川の顔面へ、叩きつけていた。

いや――

人なんて今まで殴ったことがなかったから、実際に当たったのは狙いより少しずれて顎の辺りだった。

なにをどれだけ下手をしたのか、手の甲の、小指の付け根がやたら痛い。

骨が折れていそうな痛みだった。

だけど、そんなの気にしてられるか。気になんかできるか。

北川は……北川は今、加奈を襲っていたんだ!

加奈の口を押さえつけて、声を出せないようにして、身動きを奪って――

最悪だ!!

僕の一番避けたかったことが、起きてしまったんだから。