だから……だから加奈には僕以外のもっと優しい男が彼氏になってやるべきなんだ。

僕じゃない。僕じゃ……

『次は終点んん~』

とその時ようやく、僕らの下車駅に到着した。

ぺしぺしと頬を叩いて、天使を起こす。

「おい加奈、起きろよ加奈」

「うぅ……」

彼女はすっとぼけた眼を擦り、伸びを交えながら気の抜けた声で聞いてくる。

「も、う、ついたのぉ?」

「ついたよ。重たいからとっとと起きろ」

「んん~……意地悪」

「ふん。だれが」

そうして僕の、幸せで苦しい時間は、停車したのだった。