ハリセンボンが小さくなったり膨らんだりするところに心奪われてしまった西村さんと、

そんな彼女にかまうことを人生のメロディにしている悠里をほっぽった僕は、

開けた場所で、加奈と北川が話し込んでいるのを見つけた。

水族館はどうしてこう、声や音がよく響くのだろう。

おかげで、二人に近づくのだって足音を忍ばせなくてはならなかった。

もっとも逆に、音が響くからこそ、柱の陰に隠れて聞き耳を立てることができたのだけど。

そして――聞いておきながらなんだけど、今は身を引こう、と思った。

今だけは、北川が加奈に抱きついたことも、目をつむってやろうと。