「ま、かわいかったよ、フツーに」

と答えると、ヨシは一瞬、ハッと鼻で笑った。

「男にかわいいとか、フツー言わない」

「え~、言うって~」

曖昧に反論しながら、ヨシに続いて市電に乗り込む。

ペンキのはがれまくって錆びた取っ手や、踏んづけられて黒ずんだ木の床。色の褪せてる広告なんかを見ると、急に昭和の世界へ落とされた気分になる。

そしてそんな世界に、黒髪のようなヨシの存在は、すごくマッチしていた。

傷んだ緑色のシートに座りながら、

「んで?」

ヨシは追求してくる。

「なんで付き合わなかったの?」

と、残酷なくらい、一直線に。