分厚いガラスの向こうで泳ぐ魚の、胸ビレのちょっとした音さえ聞こえてきそうだった。

そんな場所で私は大きな声をあげてしまったんだ。

ちっちゃい子やその両親、周りの人が、一斉にこっちを見た。

横では、北川くんもくっくと忍び笑いを漏らしている。

「な、なに、もう。笑うことないじゃない?」

「だって先輩、でっかって。さっき全然そんな風なこと言ってなかったのに、でっかって」

繰り返し言われると、恥ずかしい。

「だって、仕方ないよ。あんなに大きいんだもん」

抗議しながら見上げた先――水槽の上のほうを、ジンベエザメはゆぅらりと泳いでいた。