僕は加奈とデートをしたことはない。

なのに、加奈と北川が、デート?

加奈と北川がデート……?

加奈と北川が……!?

「あっ」

「おっ」

と、西村さんと悠里が揃って声を漏らした。

理由は、見ればわかる。

二人が歩き出したのだ。

仲よく……かはともかく、手を握って、そう手を握って歩き出したのだ。

手を、握って!

「うーん、どういうことだろうね、あれ」

悠里が言った。

「僕には今、加奈ちゃんのほうから手を差し出したように見えたけど?」

「んー、私もそう見えたー」

「麻里亜さん、これはもしや……」

「加奈ちゃん、本気で北川くんに乗り換えちゃうつもりなのかな?」

ぐしゃ。

そんな音がしたせいか、二人が振り向く。

僕の手の中で、悠里から取り上げたままだったスポーツ雑誌が、しわくちゃになっていた。

「あーあ」

と悠里が笑う。

「おめでとう善紀くん、お買い上げです」

「ふふふぅ、ヨシくんおもしろーい」

「……うるせぇよ」

こっちは1ミクロンもおもしろくなんてなかった。