そして僕は、

「あらあら、わざわざ。どうぞ、あがってちょうだいな。善紀、上にいると思うから」

「はい。お邪魔しまぁーす」

爽やかな、メゾソプラノを聞いた。

トントントンと軽快に階段を上ってきた彼女は、ノックもなしにドアを開けると、

「あっ。ふふふぅ、ヨシくん見ーっけた♪」

ぺこんと、えくぼを作る。片手が、チョコ色の長い髪を耳にかけた。

「なんで……西村さん……?」

「こんにちは、ヨシくん」

と、お辞儀してくる彼女。

こっちはわけがわからない。

「いや、だからなんで、ウチに……西村さんが……? しかもひとりで?」

「ふふふぅ。さーぁて、なんででしょう?」

僕はこの日、学校以外で、しかも悠里とセットではない西村さんを、初めて見たのだった。

なぜか、日曜日の昼間に、自分の部屋で。