僕は加奈に、とても残酷なことを言ってしまった。

とても、残酷で、心ないことを……。

――いや。

いいや、残酷なものか。

そうだ、なにが残酷なものか。

あれでよかったんだから、残酷なんかじゃ、ない。

ああでも言わないと加奈は、僕から離れていってくれない。

いつまでもいつまでも、無邪気な子犬が尻尾を振りながら近づいてくるように、僕のそばから離れようとしない。

だから、あれで、よかったんだ。

そうやって、無理やりに自分を納得させなければならないのは――

僕が、彼女をそれだけ好きだという証拠にほかならなかった。