「もう、やめてくださいよ、先輩」

穏やかになった北川くんの声が、

「あんなヤツのせいで先輩が泣くなんて、おかしいっすよ」

とても近い。

片手が私の頭に添えられて、ぐっと、引き寄せられる。

私は彼の肩にあごを乗せる格好になった。

「先輩……俺にしてください。俺は絶対、先輩を泣かせません、今みたいな顔、絶対させません。だから」

「……」

「俺にしてください。うんってうなずいてください」

――私は……フリ魔だ。

何度ヨシに「まったふったの?」って言われても、

やっぱり、みんなふった。

何度でもふった。

目の前の北川くんも、ついさっきを合わせて、二回ふった。

そう……

私、ひどいんだ。

ヨシのことを思うと、なんだってしてしまう。

だから私は、

「うん。……じゃあ――」

北川くんに、とても残酷なことを、言ってしまった。