僕は踏み出して、
「ほら、行けよ。俺よりお前のほうが、加奈を大事にできるんだろ? その言葉、しっかり守ってくれよ。お前が加奈を守るんだ」
北川の肩を、叩いた。
最後まで険の強い顔をしていた北川が、そして職員棟へ走っていく。
僕はそれを、ただ背中で見送った。頬を撫でる風が、まだ春なのに冷たかった。
凪いだ心のまま廊下を歩いて、昇降口で靴を履き替えて、校門を出る。
その僕の隣に、
「……」
……
当然、加奈の匂いは一切、なかった。
すごく、静かだった。
心も、となりも、世界も、なにもかも。
なんだか、すっかり傷んで擦りきれた、シネマレコードのように、僕の視界はかすれていた。
おかしいな。なんだか、おかしい。さっきまでと、なんも変わりやしないのに。
次から次へと生徒が出てくる校門の前で、振り返る。
「ほら、行けよ。俺よりお前のほうが、加奈を大事にできるんだろ? その言葉、しっかり守ってくれよ。お前が加奈を守るんだ」
北川の肩を、叩いた。
最後まで険の強い顔をしていた北川が、そして職員棟へ走っていく。
僕はそれを、ただ背中で見送った。頬を撫でる風が、まだ春なのに冷たかった。
凪いだ心のまま廊下を歩いて、昇降口で靴を履き替えて、校門を出る。
その僕の隣に、
「……」
……
当然、加奈の匂いは一切、なかった。
すごく、静かだった。
心も、となりも、世界も、なにもかも。
なんだか、すっかり傷んで擦りきれた、シネマレコードのように、僕の視界はかすれていた。
おかしいな。なんだか、おかしい。さっきまでと、なんも変わりやしないのに。
次から次へと生徒が出てくる校門の前で、振り返る。

