「ほらぁ、さっさと帰るよ、ヨシ!」

元気で明るくてかわいくて……実は面倒見がいい加奈は、密かにモテる。

誰にでも好かれるのが、加奈だ。

「そんな急ぐなよ」

職員室から出てきた僕を、まるで飼い犬のように引っ張る彼女へ、小さく抗議する。

だけど、昔っからお姉さん肌でわがままで行動的な彼女が、僕の言葉を聞いてくれることはない。

たんたん拍子で、僕らは下駄箱までやって来た。

僕は、どれくらい本を読んでいたのだろう。

どれくらい彼女を待っていたのだろう。

下駄箱にはもう、僕と彼女の靴しかなかった。