乙女系王子様

ふあ、と欠伸をしながら王子様がこっちに向かって歩いてくるので、私の心臓はさっき王子様と目が合ったときよりももっと――すごくドキドキしていた。



「……じゃあね、迷子の子猫ちゃん」



「――…ッ…!?」



私とすれ違う瞬間に、そっと、頬が触れ合うんじゃないかというくらい近く顔を寄せられ――…耳もとで囁かれた。


心地よく耳になじむ、
甘いテノールの声。


ぞくりと、背筋が痺れた。



そして私は歩いていく王子様の後ろ姿が見えなくなるまで、ずっと見ていた。


…囁かれたほうの耳を押さえて。




ようやく、動けるようになって、私もそろそろ帰ろうと一歩踏み出すと――…、



小さな音がした。


何かが、落ちたような。