「直」
「……」
俺の名前を呼ぶ瑠羽。
そっと…瑠羽の手が頬に触れる。
…あったけぇ。
不意にそう思った。
瑠羽に早く…早く会いたくて俺は朝1番に学校に来たんだ。
「なんだよ、瑠羽」
頬に触れたまま瑠羽は少し悲しそうな顔をした。
「んー、冷たいなって」
「外に居たからじゃん」
「…だね」
……泣いたからでしょ、とでも言いたいのか?
嫌でも“泣いてた”なんて認めねぇ。
惨めだろ。
あの日から……俺の心ん中は雨が降りっぱなしなんだよ。
晴れが……ねぇんだよ。
なんて考えていた。
「直?」
「あ、わりぃ。ボーッとしてた」
瑠羽の声でまた現実に戻る。
あの日以来、ボーッとすることが増えた気がする。
なぁ、瑠羽。
「ううん」
「…瑠羽。夢見んだ」
「夢…?」
「そう。…幸せだった頃の」
「…直」
なぁ、瑠羽。
お前は笑うか?
こんなに、未練がましくて女々しい俺を。
まだ傷が残ったまんまの俺を。
…あの日から一歩も前へ進めていない。

