あれは、あたしが卒業する3年生の3月。
直はもう高校生で、あたしが入る高校にひと足先に入学した。
「瑠羽ー?」
「…直」
別れを告げたあの日は、どんより雲がかかってた。
「話って?つか、もうすぐ卒業じゃん?」
「そう、なんだよね…」
出来れば……ううん。
一生直に“別れよう”なんて言う日が来ると思わなかった。
…廉を思うまでは。
「…瑠羽」
「えっと、なん、だっけ?」
「…話、あんだろ?」
……ねぇ直。
もしかして直はもうわかっていたのかな?
今でも鮮明に思い出せるんだ。
…あの日の直の顔。
悲しそうで切なそうな…今にも泣きそうな、顔。
そうさせたのは紛れもなく、あたし。
「あたし、ね…」
「うん」
「…廉、を…好きに、なったの…」
「―…!」
あまりにも残酷な言葉を、大好きだったはずの直に告げた。
あたしの頬に涙が伝う。
…直の方が泣きたいはずだったのに。
「瑠羽、泣くなよ」
「ごめっ…ごめん、ね…ごめんなさい…直…!」
「…謝んなよ、瑠羽」
その声は震えてて、ポツポツと降ってきた雨が涙を隠す。
「雨、降ったじゃん?瑠羽の正解。瑠羽に言われた通り傘持ってくりゃよかったな!」
「…直…」
「いいんだよ、瑠羽。正直に言ってくれた方がいい」
「な、お…」
「な?瑠羽は素直が取り柄だろ?」
「…っっ!」
あたしは、泣きたいはずの直に我慢をさせて。
笑わせて。
…あたしだけが、泣いた。
苦しいのは、あたしだと…直の笑顔で勘違いした。

