「瑠羽」
朝学校に来ると、一段と不機嫌そうな顔をした直が居た。
……もう、嫌なのに。
「逃げんなよ」
「逃げて…、なんか…」
「なぁ…なんか変じゃん、瑠羽」
「…変?」
「思ってる事言わねぇし、逃げるし、避けるし、無視するし」
「…そうさせたんじゃん…」
「は?」
「サユって先輩が1番になったからじゃん!」
「っ!?」
「わかんないの?最っ悪!!」
あたしはこれだけ言って教室に入った。
…あたしだって悪いと思う。
だけど、ひどくない?
ある意味自覚なしって事だよ?
…ふざけんなってなるよ。
――部活
「直先輩調子悪ー」
「きゃぁっ!!瑠羽かっこいい〜♪」
「瑠羽ちゃーん!好きぃー!」
「ふぇっ!?…あ、ありがとう?」
「可愛いー!」
最近やたらと声を掛けられる気がする。
直ってば、私情持ち込んでる。
シュート外し過ぎ、パス通らなさすぎ、上の空。
…怪我する、し。
「直!」
「……」
「シュート入んない直なんか嫌なんだけど」
「っ!!」
「カッコ、悪くない?」
「はっ…。言ってくれんじゃん、瑠羽」
「偉そうな態度する前に決めなってば」
「言われなくても?」
そう言って直が放ったボールは綺麗な弧を描いて、
ゴールネットを揺らした。
「…かっこいい」
「なんか言った?」
「一発だけじゃ迷惑かけたぶん取り返せないって言った」
「厳しいなぁ(笑)」
そう。
直とはいつもこうだった。
喧嘩したって、その日のうちに仲直り。
バスケがあたしと直を繋いでくれてたから。
あたしと直の出会いはバスケ。
そして終わりも―――…………、
バスケだったんだ。

