『いえいえ、なんでもありませんよ。……傘がないからお互いずぶ濡れですね。……少年。寒くはありませんか?』 声が出ない所為か。どう返事をすればいいのかと戸惑う少年。 そして、首を横にブンブンと何度も凄い勢いで振った。 首とんじゃいそうです。 『そうですか。ならよかったです。もう少しの辛抱ですからね』 私を見上げていた少年は、表情を緩ませコクリと頷いた。