彼は溜め息を吐いた。コンビニのビニル袋は汗をかいている。生温くなったら、不味いのは重々承知のこと。なにより、ここで二の足を踏んでいることがバレてしまえば、より気まずくなるのは目に見えている。否、それ以前に彼は踊場に今日もいるのか。
このように悶々としてしまうから、だから、“外”では会いたくなかったのだ。再び溜め息を零す。どうすることもできないし、どうこうしようともしていない。青年が救済を求めるならば、あの楽園にはもう顔を出せない。面倒は嫌いであるし、関わりたくもない。何せ、他人なのだ。
来た道を戻ろうと、二三歩下る。
でも、と直後に静止した。言い訳をするように心の中で声を発した。この牛乳を飲むのは、彼だけじゃないか、と。
体の向きを元に戻して階段を登り始める。生温くなった紙パックを手にした彼はどのような表情をするだろうか。不機嫌になるだろうな。そうだ、今日は名前も聞こう。踊場に平生の如く居座る青年に向かって、先ず一番に質問してみよう。



