実は実で、周りから疎まれる事はそれほどなかったが、それ以前に、母親から愛されず、何かあれば、虐待されていた。

生まれた時から、実は母親に疎まれ、ろくに母乳を与えられた事が無かった。

しかも実は、母親の優しさの象徴である、あの、柔らかくて温かい乳房に吸いつく権利すら与えられなかったと言う事であった。

「…ばあちゃんが言ってたよ。偶然目撃したには、ひびの入った皿に、母乳を移し替えて、皿から飲まされていたらしい。

…犬よりひでえよ。」

抱き締められたまま、千歳は実の衝撃の告白に耳を傾けていた。

「…俺にとっての母親は、そう言う訳で、俺の境遇を哀れんでくれたばあちゃんだった。

入学式や、授業参観、卒業式、旅行、記念写真…様々な思い出の中に、ばあちゃんはいても、おふくろはそこには、一切、いないんだ。

オヤジは、俺が生まれる前におふくろと離婚していなかった。

理由を聞けば、激怒したおふくろから散々に殴られた。

それについては、ばあちゃんでさえ渋い顔をして教えてくれなかったけれど…」