「おかーさーん。私ぃ、戻って来たよぉ~っ。

…鍵、開けて?」

テーブルに伏して泣いていた祐子は、インターホンから聞こえてきた千歳の声にハッとし、急いで玄関に駆けていった。

-千歳。一緒に逃げましょう。うんと遠くへ。

あの女は死んだ。

もう、障害はないの。

あの時、あの家は私と茜の二人きりだったし、証拠になりそうな物は、髪の毛から指紋から、すべてふき取ってきた。

見張り隊も、所詮茜の指示がなければ、機能しないから何も怖くはないの。




逃げましょう。

そうすれば、あなたはイジメのない幸せな世界に行ける。

そして私も、忌まわしい過去の一切を、闇に葬ることが出来る…-

「今、開けるわ。待って!」

祐子は、玄関のドアの鍵を外し、急いで扉を開いた…