それはあたかも、たった今より獲物を狩ろうかと、自分の得意とする間合いをつめにかかっている獣のようであった。

「ヒッ!」

直感的に身の危険を感じた千歳は、立ち上がって逃げようと中腰になった。

だが、先ほどからやたらと体がだるく、眠気がしていた千歳は、平衡感覚を失って、後ろ向きに、こてん、と倒れ込んでしまった。





「…起きろよ!」

バチンという、大きな、音。

「ぶわあっ!あっ!


…?、えっ、えっ!?こ、ここはどこ?


…きゃあっ!」

再びバチンという、大きな、音。

「…寝ぼけてんじゃねえよ、目を覚ませ、千歳。」

仰向きに倒れ、そのまま座敷で数十分の間、意識を失っていた千歳。

その千歳のほおに向かって、思いっきり平手打ちを食らわせ起こした実は、寝ぼける千歳のほおにもう一発平手打ちを食らわせた。

そして千歳の顔の真ん前まで自分の顔をよせてにらみつけていた。

-ええと、えっと…そ、そ、そうだ、わ、私逃げだそうとして、その時頭がぼーっとしてて転んで…

えっ!な、何!?

手足が…動かない!-