千歳が通された座敷には、ただ中央に向かい合って座る事が出来るように座布団が二枚しかれているだけで、それ以外、殺風景なほど、何も置かれていなかった。

ただ一つ、その座布団がしかれてあるすぐ近くの柱付近に、白い布で覆われた、妙な形をした物体を除いて。

「さあ、座ってくれ。疲れただろう?

ん、どうした?」

「えっ!?い、いや、何か実君、いつもと雰囲気が違うような…」

「雰囲気が違う?あはっ、まあ、そうかもしれないな…

…何せ、俺、ずいぶんと昨日までと比べて、人生いきなり大きく変わっちまったからなあ。」

「じ、人生が変わった…

…キャッ!」

向かい合って座る、実と千歳の真横に、いつの間にか音もなく、ひとりの老婆が、お盆をもって立っていた。

実は言った。

「おい、ばあちゃん。駄目だろ?

何も言わず、いきなり現れたりなんかして!

…ああ、お茶ね。ありがとう。

さあ、千歳?」

「あ…ありがとう…」

先程から、妙な緊張感で、のども乾いていたせいもあって、その老婆が差し出してくれたお茶を、千歳は勢いよくゴクリとやった。