「千歳には、何が書いているか、分かるか?」

「もちろん!…と、いっても、おばあちゃんに教えてもらったんだけれどね。」

「お、教えてくれ!な、何て書いてあるんだ、おい!」

突然、実は大声を出して、千歳の両肩をぐっとつかみ、そう尋ねた。

千歳は、突然の事に驚き叫んだ。

「キャッ!ど、どうしたの実君いきなり!?

…い、痛いよ。」

「あっ、わ、悪い!

…な、何て書いてあるんだ?」

実があせりながら、千歳の両肩から手を離すと、千歳は落ち着きを取り戻し、語り始めた。

「-しろかねも くがねもたまも なにせむに まされるたから ともにしかめやも-

…奈良時代の歌人、山上憶良の読んだ和歌をもとに、母さんと、そこに写っている友人が、一緒になって作ったんだって、うちのおじいちゃんとおばあちゃんが言ってた。

銀(しろかね)も金(くがね)も宝玉も、友達以上の宝物ではない、友達以上の宝物なんてないよ…って意味を込めて作ったらしい…」

「な、なあ、千歳…突然だけれど、俺、もう帰るな。じゃ!」

「えっ!?」