普通に慰めてくれれば良かっただけで、かえって、こんな変な嘘、腹が立つだけよ…」

そう呆れ顔で、夢中になって語っていた千歳。

だが実際は、どうでもいいどころか、その二枚目の写真の方こそ、千歳がまだ知り得ていない、母親の祐子から聞かされる事のなかった、千歳の不幸な生い立ちを決定づけた根元を示す物であった。

そこには丁度、千歳と同い年の頃の、二人の少女が、仲良く笑顔で腕を組み合ってピースをしている様子が写っていた。

一人は、誰だか分からないが、もう一人は、若き頃の祐子だった。

続けて千歳は言った。

「…裏側に、さっきと同じ様にメッセージが書かれているわ…って、

どうかしたの、実君?

その写真、何か気になるような事があった?

じいっと、食い入るようにみつめて。」

「えっ!?あ、ああ、いや?

ええっと、ああ、裏側ね。

…何だ、これ?ミミズみたいな文字で、何書いてるか、分からねえよ…」

「ミミズって…それは草書っていうの。

短歌や俳句を書く時に、ほら、さらさらさら~って、続け字にして書いているのを、見たことないかしら?」