贖銅(ぞくどう)の刑

千歳は、朝の電話でのやり取りを思い出してまた腹が立ち、かばっと起きあがったが、悪酔いのため、ふらふらと倒れそうになった。

「おいおい!危ねえって!」

千歳は、床に倒れそうになった所を、すんでのところで実に受け止められた。

千歳は、再び実にベッドの上に寝かされ、実にやさぐれている理由を尋ねられると、少しずつ、淡々と答えだした。

「母さんの部屋で、ある写真を見つけてさあ…

一つは、これ。」

「はあ…」

千歳は、ポケットから一枚の写真を取り出し、実に手渡した。

そこには、家の中で祐子と赤ん坊の千歳、祐子の父と母が写っていた。

あの、例の四人家族で写っている写真であった。

「で、これが?」

実が、ぽかんとした表情で千歳に尋ねると、千歳は、少し怒り気味に言った。

「私の父さんが、写っていない。」

「えっ?そ、それがどうしたんだ?

…ああ、でも確か俺と同じでお前の父さん、すでに離婚…」

「…じゃなかったのよ!」

そこまで言うと急に、千歳はわっと泣き出した。

「わ、訳分かんねえ!

一体どうしたってんだよ!」