杏実がキッと俺を睨んだ。 「最ッ低‼」 「ハァ? 騙されそうなお前が悪いんじゃん」 「っ!」 俺を睨んでいたはずの瞳が揺れて、さっきの俺と同じように逸らされた。 灯汰(とうた)なんて、大ッ嫌い‼ そう叫んで、杏実は泣きながら走って行った。 ぐしゃぐしゃと自分の髪をかきあげる。 俺自身に、ひどく苛立っていた。 「何やってんだよ。俺は!」 壁を殴る。 ダンッと低い音がした。 ビリビリと痺れるもどうでもよかった。 ホント、杏実の言う通り。 俺、最低だ。