【完】ヒミツの恋を君と。

目の前の不機嫌スタッフの顔を下から覗き込んだ。


あたしがまじまじ見ているのを知って、彼は更に機嫌が悪そうな目をして視線を逸らせる。



その顔に、あたしの記憶センサーが機敏に反応する。




この人、誰かに似てない?

あたし知ってる人じゃない??




芸能人?モデルさん?テレビに出てる?

いやでも、あたしはそっち方面詳しくないし。




二次元?アニメ?

いや、違うな……三次元で見たことがある気がする。





その目、その鼻、その口……。



ん、まてよ?

そこにもしも黒縁眼鏡があったら……髪がボサボサなら……?





はっ!?!?





気付いた事実に、思わずその顔を指差して叫んだ。





「あ────っ!!!は、は、は………ぅぐっ!?」


「お客様お静かに!」





叫びたかった名前を叫べず、変な声しか出せないのは、不機嫌スタッフに手で口を思いっきり塞がれたから。




はるーはるー晴!!!


この不機嫌イケメンスタッフは晴ですっ!!!




一度気付いてしまったら、疑うことなく晴だって分かる。




今すぐ叫び出したい程の衝撃!




でも、目の前のイケメンバージョンの晴はあたしの口を塞いだまま眉間に激しくシワを刻んでいて。


あたしを睨むその目は、「これ以上叫んだらコロス!」と完全に言っている。




殺られる!




命の危険を感じたあたしは、晴に口を塞がれたまま大人しくした。





周りのお客さんは呆然とあたし達のやり取りを見ていて。

さっきのセクハラスタッフは何が起こってるのかと興味津々な顔でこっちを見てる。