「えぇーでも、先輩とかにいじめられてるんじゃない?」


「ま、ま、まさか…!楽しい先輩に囲まれて、ぼ、ぼっ、ぼくは幸せです」





“あたし”ではなく“ぼく”ということ。

これが数週間経った今もまったくもって慣れない。



そして慣れない事がもうひとつ。





「酷いなぁ~、アスカちゃん。オレ達がモカを苛める訳ないでしょ?ね、モカー」


「……っう…!?」





急に左横から出てきたトウヤさんが、もうすでにあたしを抱き締める様にその両手で囲むから、





「可愛い!モカ」





あたしはお決まりのフリーズ。





「ほら、モカくん固まっていないで、みなさんのカフェオレに砂糖をお入れして下さい…」


「は、は、はいっ!」





リツキさんの言葉に我に返って、茶色と白の角砂糖が入ったビンを左手に持った。


“イケメンの御奉仕に喜ばないお客さんはいない”

そんな店長の信念の元、ここは、店員がお客様のホットドリンクに砂糖を入れて、さらに混ぜてあげるという、あたしが客なら、絶対お断りするとんでもないサービスを行ってたりする。