「封印していた想い――私が解放してしまったんですね」
ぽつりと楓が言った。
それに堂本は弾かれたように顔を向けた。
「……私、似てるんですよね? その、堂本さんの好きな人に」
菫の顔は忘れたくても忘れられなかった。
その顔が、まさかあの雨の日に見つけたなんて。
すぐに本人ではないことくらいわかったが、その菫に似た楓を放っておくことなんか当然出来なかった。
「顔だけじゃなくて、他も似てると思うとこ、あったけどな」
吹っ切れたように、楓の目を見て言った。
そんな堂本に、楓は「会いに行ってみたらどうですか」と、言おうかどうか迷う。
自分は今回のことで、堂本に背中を押され、助けて貰った。
だから、もし、自分が何か手伝えることがあるのなら、なんでもいい。力になりたい。
でもそれが堂本の求めていることなのか、確信はなくて。
だから無責任に、言って勧めることも出来ないと思った。
その楓の想いを知ってか知らずか――堂本が言う。
「会いに行く。お前といて、そう決めた」
いつもと同じ、余裕のある声に戻っていた。
その声と言葉と表情に、楓は一瞬複雑な心境になる。
綺麗事は言っても、堂本への想いは変わってない。
堂本が菫に会うことで、自分の恋は不利になる。
「楓と違って、おれは相当カッコ悪ィけどな」
「私は……どんな堂本さんでも好きですから」
「……モノ好きなやつだな」
お互いに開き直ると、目を合わせて笑った。
「でも、そんなに想う相手がお姉さんだなんて……神様は残酷ですね……」
「ふっ」
「?」
素直に感じたことを言った楓を、可笑しそうに堂本が笑う。
それを不思議に思って楓が首を傾げると、堂本が言った。
「まぁ、残酷といえばそうだな。中途半端に期待させるんだから」
「『期待』?」
「おれと菫は“義理”の姉弟だから」
事実を知った楓は、驚いて目を丸くしたが、すぐに前傾姿勢で堂本に近づいて言う。
「法律でも認められる関係なら、なおさら会いにいくべきです!」



