嘘つきなキミ


窓に映る自分を見て、堂本は自分の過去を思い返していた。


15で両親が離婚し、17のときに再婚した。
その時にお互いに連れ子だった、自分と菫。

反抗していたつもりはないが、そこまで新しい家族に打ち解ける程のこともせず。
ただ、その新しい家族のいる家にいて、学生生活を送っていた。

新しい父に何か話しかけられれば、無視はしないが、必要以上の答えも言わない。


別に嫌いでもなければ好きでもない。


そういう冷めた感情があったのだ、と今の堂本は思う。

そんな思春期の、扱いづらい堂本に、躊躇いなく近づいてきたのがひとつ上の菫だ。

堂本は無意識だったのだが、その頃特に笑顔を見せることも、自分から話しかけるようなこともしなかった。

けれど、菫は積極的に堂本に触れ合おうとしてくれていた。

深い感情があるわけじゃない。
ただ、性格的に放っておけない。“弟”なのだから、当然のことだ。

菫のやることは、そういうことが前提だったはず。


でも、堂本は違った。

『由樹』と呼ばれる度に、違う感情が芽生えてしまった。

その為に、堂本の記憶では一度も直接『姉ちゃん』と呼んだことがない。

『姉ちゃん』と呼ぶのに、抵抗があったのだ。

代わりに何度か『菫』と呼んだ。

そのことを咎めるのは、母親だけで、当の本人の菫は一度も嫌な顔をしなかった。


だからこそ、余計に堂本の想いは止めることが出来ずに――。


『……嫌いになったから……?』


家を出る時に、運悪く、菫と出くわした時にそう聞かれた。

そうじゃない。そうなれたら、どんなにいいか。

歯を食いしばって、堂本は答えた。


『嫌いになるまで、会わない』


――嘘でもつけば良かったのに。

“嫌いだ”と、一言。

なのに、あの時言った言葉はそれとは逆の……告白だった。


本音は、自分を忘れさせないように。
記憶に刻みつけたくて、言った言葉。