クツズレ

 


「………靴ズレですか?」

とても哀しい気持ちを抱くのに、言葉を上手く選べない僕は、気付けば彼女にこんなヘンテコな問い掛けをしていた。


「えっ?あぁ!」

彼女は驚いた様子で、気まずそうに裸足の足をそっと隠すと

「あ……はい…。靴ズレ……のようなものです……」

と、不自然な笑顔で答えた。



目を合わせぬままの二人に、再び沈黙が訪れる。

彼女の不自然な笑顔も、いつしか消えた。




 悔しいけれど、僕にはこんな時どうしたらいいのかが、全く分からなかった。


何も出来ない僕。


けれど、せめてこの沈黙だけでも、ゆっくりと受け止めてあげたいと思った。