…ふっ、あはははははは―――。


声を上げて笑うあいつの表情が、悔しそうに歪む。


「いいなあ。まじで完敗。

はあ…、自分が情けないよ。

引き止めて悪かったよ。

…話に付き合ってくれて、ありがとう。」


感謝される覚えは、ないんだけど。

満足のいく答えだったのか、あいつはフロアに戻っていく。


はあ――――。

わしわしと髪を掻き上げながら、息を吐く。


さっさと帰ろう。

俺と玲の、家に。

家に帰ったら、玲を抱きしめて寝よう。


「たすくーっ。

どこ、行ってたの??」


梨花さんの肩にもたれていた玲の頭が、俺を確認すると、ゆらゆらともち上がる。


「トイレ。」


「おそかった、ねぇ。」


何が嬉しいんだか。

目を細めて笑う玲の表情を見ていたら、何だか俺もゆるりと気が抜ける。


「帰ろうか。」


「うんっ、帰る。」


…っ、子ども、か。

無邪気に酔っ払う、玲の頭にそっと手を乗せた。


梨花さんに荷物を持ってもらい、玲をよいしょ、と抱き上げた。


「あるけるよ?」


…どう見たって、歩けねーだろ。


梨花さんと二人、考え込んだ挙句の答え。

そのまま抱きかかえてタクシーに乗せることにしたんだ。


「ね、おろしてぇー。ね?」


中途半端に意識があるらしく、じたばた動いてはいたけれど。


取りあえず、ここからさっさと出たいという気持ちの方が強かった。