ああ、もう。

何でこんなこと、言っちゃったんだろう。

自分は棚に上げて、何で翼を責めてんのっ…。

やだ…。

こんな時に、泣きそう…。


「…玲。」


翼は私の肩をそっと抱き、ロビーから連れ出した。

チャペルに通じる廊下は、人気もまだらだ。

そこをそのまま通り抜けると、大聖堂へと続く扉を開ける。


―――――。


誰もいない静寂した大聖堂の、厳かな雰囲気の中。

私にはもう、さっきまでの感動の余韻に浸る余裕も、ない。


「どうした?急に。」


アンティークの長椅子に座らされると、頭の上で大きく息を吐く翼を感じた。


「急じゃない。ずっと嫌だった。」


呆れてるよね…。

我儘ってわかってる。

だけど、どうしようもなかった。


ぎゅっと腕を組んで、翼を上目づかいに覗き込んでいた女の子。

私に気付くと、わざと腰に手を回して写真に納まっていた。

自信たっぷりの微笑みを、カメラに向けて。

翼が私に気付いて、こっちに歩いてくる間ずっと、私に向けられていた挑戦的な、瞳。

そんな眼差しは、日常茶飯事。

気にしない、気にしないって、思ってても、慣れないの。

私も全部は、受け止められない…。

写真はずっと残っちゃうでしょ…。

本当は、カメラごと投げ捨ててやりたいくらい悔しいの。

こんな激しい感情に振り回される自分が、つくづく嫌になる。